鼻と舌とペニス

芸大で発生学の講義をされていた三木成夫先生は目と手と舌は同じ感覚細胞が分化したものであり、「舐めるように見る」という言葉について、舐めると見るとはもともとは奥の方でつながっている感覚だと言われた。確かに、美しい景色を前にひとつも余さず眺め目に焼き付けようとする感覚は、おいしいものを舌で味わい尽くそうとする感覚と似ている。谷中で下宿生活をしていたころ、夏の暑い日に天井の高い銭湯はオアシスのように感じられた。谷中の世界湯に行って熱い湯船につかった後、タイルの床にへたり込み、桶に湯と冷たい水でちょうどいいところまでうめたやつを肩や頭から背中にかけると、のどの渇いたところにビールを飲んでいるような気持ち良さだ。両眼とその下に位置する鼻、ふたつの扁桃腺とそこから伸びる舌、睾丸とその間を垂れるペニス、これら三組の不思議な相似。


あれこれ考えて眠れず、自分を安心させるために寝しなに食べると、これは新たなエネルギーを補給することになりますます眠れないというまさに悪循環。さらには過食のため腹が痛んでいるのに空腹と誤解しさらに詰め込む鈍感さだ。私の内なる身体は本当によくやっているというに・・・。谷中の富士見坂を何往復もジョギングしたいときもあれば、尋常なく疲れてしまうのはどういうことだろう。代謝の仕組み、スタミナとはどういうものか。私の経験では、元気の出る食べ物はホウレン草と稲荷寿司だが。

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