子どもの頃の私は、今にもましてイジイジした性質で、居間に寝転んでは、すすけた天井をながめたものだった。天井板の木目や節は人の顔や怪物のように見えたが、そのままじっと見つめていると、ジワジワと輪郭が揺らめいてくる。そうやって、冒険物語を空想するのだった。
他に何の取りえも無く、ただ美術にのみ自信のあった私は、大学で絵画を学ぶ事にした。しかし、アカデミックな油絵の手法はまるで身につかず、自分は最も不得意な道を選んでしまったのではないかと思い悩んだりした。その後の滑稽な試み、ムキな思い、そして数々の作家との出会いを経て、たどり着いた自分の絵の方法は、何のことはない、幼い日に見たあの天井画だった。